バスケットは…お好きですか?

 と聞かれたら、「好きではないです。でも6年間やってました。」という答えになる。

私がバスケをしていたのはたった6年、小3から中3までのこと。

それも本気ではなくなんとなく。なんとなくでミニバスでも中学の部活でもキャプテンをやっていた。


スラムダンクの映画を観てきた。「THE FIRST  SLAM DANK」、みんな大絶賛していたしとても楽しみにしていた。

スラムダンクは当然漫画も読んだし夏休みのアニメ再放送も毎年見ていた、青春時代の思い出のような作品。ちなみに牧が好きです。結婚してほしい。

映画は、本当にリアルに描き込まれていて、原作やアニメでよくあったデフォルメされたギャグ顔パートみたいなのがなくて、生身の人間のように終始描かれていた。

これあれだ、「君の名は。」で東京と田舎の風景のあまりの描き込みっぷりにエモエモ感情が爆発するやつだ、そのバスケ版だ。

もうね、冒頭の湘北と山王のメンバーが線画で描き出されてバーンとなるところから感極まって泣きそうになってしまい、それからはもうずっと涙がこぼれないように必死だった。本当に、こんな素晴らしい作品をつくってくれてありがとうという気持ちでしかない。スラムダンク最高。


宮城の過去の、ミニバスの試合シーンね。あの体育館のあの空気感があまりにも“ソレ”で、いろんな記憶がブワーッとよみがえってきた。

父親に言われて小3の頃ミニバス(地域のスポーツ少年団)に入った。3年生は私だけであとは5・6年生だったそのチームは、地域の強豪だった。全国とまではいかないけど、そこそこの大会でそこそこの成績をおさめていた。コーチは怒鳴ると怖いが、大抵の試合は勝つのでいつも上機嫌で「 勝 利 」と書かれた扇子をあおいでいた。いつもみんなとじゃれあっていて、内気な私はとりあえずニコニコすることだけを心がけた。

私が4年生になる頃、何人か同級生が入ってきた。1年のアドバンテージ。私がキャプテンになった理由はそれだけだ。

私が6年生になる頃、かつて誇った強豪チームの面影はなく、それはそれは弱いチームとなっていた。

試合でも練習でも毎回こっぴどく怒鳴られる。コーチは私含め同級生との接し方がわからないらしく後輩たちとばかりじゃれていた。卒業のときの宿泊イベントでコーチの現在進行形の恋バナを聞いて初めて私たちは盛り上がり、軽口を叩けた。「お前らともう少し早くこうなれてたらな」という言葉が印象にある。

負け試合ばかりでも負けに慣れることはなかった。いつも悔しくて泣いていた。けろっとしているチームメイトが腹立たしかった。が、私は赤木のような熱意があるわけでもなく大した努力もしない。よくある弱いチームだ。

父は「チームで負けても自分は勝ったと思えるような試合をしなさい」が口癖だった。

父は熱心で、毎試合ビデオを撮り、家ではそれを見ながら反省会をする。私は惨めな自分を見ていたくなくて真面目に聞いたりはしなかった。

宮城が山王にプレスされてボールを運べないシーンなんてトラウマ直撃だった。(それされて私は強豪チームに123対0で負けたことがある。記録的大敗すぎて点数まで忘れられない。山王の監督の言う通り普通はそこで心がバキバキに折れるんよな。保護者やコーチの「何もそこまでやらなくても…控えの選手とか出せばいいのに…」という憐れみの声が聞こえたけど、私は清々しさと腹立たしさが同居する謎の感情が生まれていた。笑)

知っているシーンだけど、リアルに描き込まれているのとIMAXの臨場感とで、もはや初めて見る現実のようだった。山王戦を目の前で観ているかのような。

バッシュの音、ドリブルの音、ホイッスルの音、全てに心がえぐられた。


大してうまくないのに「キャプテン」で「エース」なのが嫌だった。強いチームはもちろん弱いチームでも「4番」は重圧だ。私がチームの代表で、私を見てこのチームが評されるのだ。4番同士で比較されるのも辛かった。悔しかった分は努力したが、私よりうまい人たちは私の努力なんて塵にもならないくらい努力しているので、私だって一生懸命やったんだ なんて口が裂けても言いたくない。

だから中学では一目でキャプテンとわからない18番をつけていた。18はたまたま占いで出たラッキーナンバーだ。(試合で相手チームに渡すスコアシートの選手名簿が18、4、5、6…という並びにになっていてあまり意味はなかったし、今考えると厨二みがやばい)

中学ではバスケがどうとかよりも、気の強い女だらけのチームをまとめることに苦心した。おまけに顧問が国語教師なのに何を喋っているのかわからないバスケ素人のじいさんだったから色々しんどかった。私が藤真も好きなのは、監督に恵まれなかった4番という境遇が同じだからだと思う。

高校は、レギュラー争いに必死になるような強豪校ならバスケを続けようと思った。そうでなかったから茶道部にした。

こう書くと、嫌々ながらやっていたかのようだけど、もちろんバスケの試合で嬉しかったことや気持ちよかったこともそれなりにある。同点で迎えた最後の数秒、相手のファールで私のフリースロー。これが決まれば勝つ。という局面で決めたときの快感たるや。

なのでバスケをしていたことに後悔はない。スポーツから学べることはたくさんある。全ての経験が糧になっている。

スラムダンクは  キャラクターの、作者の、「バスケが好きだ」という気持ちがひしひしと伝わってくる作品だ。

それが今回の映画でも爆発していた。

「バスケットはお好きですか?」と問われている気持ちになった。

私は何度問われても「いいえ、特別好きというわけではありません」としか答えられない。

でも「スラムダンクはお好きですか?」と聞かれたら

「大好きです。昔からずっと。」

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